コラム

産業カウンセラー/臨床心理士 緒方俊雄のコラムです。

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ストレスフリーな生き方を目指して(その4) ~自分の気持ちを素直に言う~

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その3で「いい人を止めると楽になる」について書きました。いい人は人から嫌われるのを恐れて、自分の考えや感情を殺して、相手に合わせますが、これは非常にストレスがたまる生き方です。いい人を止めて、自分の気持ちに素直に生きても、人から嫌われなく、逆に愛されることが多いということを、私の大好きな長嶋茂雄さんと寅さんを例に挙げて説明しました。

ただ、書いていることはそうかもしれないけど、とても長嶋茂雄さんと寅さんにはなれないと思われたかもしれません。確かに、私も長嶋茂雄さんと寅さんにあこがれてはいますが、とてもあの境地まではいけません。そこで、今月はいい人を止める入門編で、いい人を止めて、自分の素直な気持ちを言ったらどうなるかを考えてみようと思います。

お母さんがリビングで本を読んでいます。そこに、小学生の太郎君(仮名)が帰ってきて、テレビをつけます。テレビの音が大きくて、お母さんは読書に集中できません。だんだんイライラしてお母さんは言います。「学校の宿題があるんじゃないの」「子どもなんだから家でテレビなんか見てないで、外に行って遊んできなさい」。

すると、太郎君が素直な子なら、嫌々2階に行って宿題を始めるか、疲れているのに外に遊びに行きます。

太郎君が反抗的な子なら、お母さんの言葉を無視して、テレビを見続けます。そして、「お母さんおやつ」と言うと、お母さんから「おやつなんかあるわけないでしょ」ととげのある言葉が返ってきて、喧嘩モードに突入します。

どちらの場合も、お母さんも太郎君も嫌な気分になります。

どうしてこうなったのでしょうか。お母さんの素直な気持ちは「太郎君のテレビの音が大きくて、本が読めなくて困っている」ということです。しかし、お母さんはその気持ちを隠して、太郎君を動かそうとしました。

それでは、お母さんが太郎君に、「太郎君、お母さん本を読んでいたんだけれど、太郎君がテレビをつけて、本が読めなくて困っているの」と素直な気持ちを言ったとします。

すると、太郎君はびっくりします。お母さんを困らせようと思って、テレビをつけたのではないからです。そして、「お母さん、どうしてもこのテレビ見たいんでもう15分がまんしてもらえない」「お母さん、これ位の音にしたら、本が読める」「お母さん、このテレビ今見なくてもいいから、ビデオにとっておくね」「お母さん、このテレビ特に見たいわけじゃないから、外に遊びに行ってくるね」と幼い頭を振り絞った言葉が登場します。

お母さんは希望が叶ったうえに、お母さんも太郎君も嫌な気分になりません。

この例のように、カウンセリングをしていると、クライエントが今まで押し殺していた自分の気持ちを言ったほうがうまくいった、さらに人間関係がよくなったということがたくさんあります。

先日も、10年間うつ病だった方が、うつ病がよくなってきて、自分の気持ちを素直に話すようになったら、今まで仲の悪かったお兄さんと兄嫁さんと逆に仲がよくなったと驚いていました。

自分はいい人で、考えや気持ちを押し殺して生きていると思ったら、なかなか長嶋茂雄さんと寅さんのようにはいきませんが、先ずは家族や仲のいい友達に素直な自分の気持ちを話してみてはいかがでしょうか。

  • 2012年12月24日(月)10時53分

ストレスフリーな生き方を目指して(その3) ~いい人を止めると生きるのが楽になる~

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その1でも書いたのですが、いい人は大体疲れています。何で疲れるかというと、人に気を使って、自分を殺しているからです。

10人の人がいたとすると、2~3人は私のことが嫌い、5~6人は私のことはどうでもいい、2~3人は私のことが嫌いというのが普通です。しかし、いい人は5~6人の私のことはどうでもいい人や2~3人の嫌いな人にも愛されようとします。そのためには、自分の考えや感情を殺して、相手に合わせるようになります。これは非常にストレスがたまる生き方です。

では、どうして全ての人から愛されようとするのでしょうか。こういった人のカウンセリングをしていって分かってくるのは、人から嫌われるのを恐れているということです。

では、いい人を止めて、自分の思っているように生きたらば嫌われるのでしょうか。

私の好きな長嶋茂雄さんと寅さんについて考えてみようと思います。

長嶋さんは現役時代に、小学生の一茂君を車で、球場によく連れて行きました。一茂君はネット裏で観戦です。長嶋さんは試合でホームランを打つと嬉しくて、一茂君のことをすっかり忘れて、一人で車に乗って家に帰ってしまいます。一茂君は試合が終わって、いつまで待ってもお父さんが現れません。すると、球団の人が気づいて、一茂君を家まで車で送り届けます。こういうことが何度もあったそうです。

長嶋さんが現役時代に職業欄に何と書いていたか分かりますか。「読売ジャイアンツ」「プロ野球選手」ではありませんよ。長嶋さんは職業欄に「長嶋茂雄」と書いていたのです。ウルトラマンが職業欄に「警察官」でもないし「自衛隊」でもないしと考えて、「ウルトラマン」と書くのなら何となく分かりますが、職業が「長嶋茂雄」というのはすごいことだと思います。

今はスイカで改札を通るようになりましたが、以前は車掌さんが切符を切っていました。しかし、長嶋さんは切符を買いません。改札を「やあやあ」と手で振りながら、笑顔で通り抜けていくのです。車掌さんも長嶋さんが来てびっくりしている内に通り過ぎてしまいます。長嶋さんが他の人と一緒の時はその人が長嶋さんの切符も買って追いかけたそうです。

少し話が脱線しますが、長嶋さんのライバルだった金田正一さんがこの話を聞きました。金田さんは巨人に入る前に、国鉄スワローズにいました。「国鉄(JRの前身)に勤めている自分が切符を買っているのに、長嶋が切符を買わないのは許せない」と、自分も切符を買わないで改札を通ろうとました。すると、車掌さんにつかまってしまい、とても怒っていました。

こんな自由気ままに生きている長嶋さんですが、「日本の太陽」のように全ての人から愛されています。

寅さんも同じです。私は寅さんが大好きで、「男はつらいよ」は48本全て観ました。寅さんは70年代、80年代の会社員の憧れです。何しろ会社員と全てが違うのです。会社員は会社に行くとびっしりスケジュールが決まっています。そして、操り人形のように、そのスケジュールを黙々とこなしていきます。しかし、寅さんは何も決まっていません。好きな時間に起きて、その日の風の向きで行く場所を決めるのです。

ちょっと嫌なことがあると、直ぐに喧嘩して家を飛び出して行きます。おいちゃんもおばちゃんも「寅のやつ」と言って困っています。桜さんも「お兄ちゃん」とお金を持って走って追いかけます。しかし、実はみんな寅さんを愛しているのです。

それどころか、勝手気ままに生きている寅さんを日本中の人が愛しているから、世界で1番多いギネスで認定されている映画になったのです。

長嶋さんや寅さんは「いい人」の真逆な生き方なのではないでしょうか。しかし、みんなから愛されている。それは、長嶋さんも寅さんも悪気がないで素直に生きているからです。

このように、いい人を止めて、自分の気持ちに素直に生きても、人から嫌われません。逆に愛されることが多いのです。

カウンセリングをしていると、長年うつ病を患った人が「いい人」を止めることにより、生きるのが楽になり、人間関係が上手くいくようになったということに沢山出会います。

次回は、いい人を止めて、自分の素直な気持ちを言ったらどうなるかを考えてみたいと思います。

  • 2012年11月23日(金)12時10分

ストレスフリーな生き方を目指して(その2) ~嫌なことはほどほどに、好きなことは徹底的に~

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東日本大震災で、「がんばろう日本」というスローガンで日本中がんばっています。しかし、少し前に鎌田先生の「がんばらない」という本がベストセラーになりました。

人はがんばったらいいのでしょうか、がんばらない方がいいのでしょうか。また、人はがまんした方がいいのでしょうか、がまんしない方がいいのでしょうか。これは簡単そうで難しい問題です。

最近、若い人の新型うつ病が話題になっています。うつ病といいながら、仕事が終わると元気に遊びに行ったり、休職中に海外旅行とかして、ただのわがまま病と思われたりします。実際にカウンセリングをしていると、20代、30代では、がんばれない、がまん出来ない人が新型うつ病になっています。逆に、40代、50代では、がんばり過ぎ、がまんし過ぎた人が従来型うつ病になっています。

「がんばる」という言葉をよくよく考えると、「がんばりたくないのに、がんばる」ということではないでしょうか。「がんばりたくない」ので体はブレーキを踏みます。しかし、「がんばらなければならない」ので、心はアクセルを踏みます。ブレーキとアクセルを同時に踏んでいるので、なかなか進みません。なおさらアクセルを踏むことになります。そして、心と体が分離していきます。

「がまんする」という言葉も、「がまんしたくないのに、がまんする」ということではないでしょうか。「がまんしたくない」ので体はブレーキを踏みますが、「がまんしなければならない」ので、心はアクセルを踏みます。

「がんばる」も「がまんする」もやりたくないことをしているのです。前回の「人生を楽しもう」で書きましたが、楽しいことをするときはストレスがありません。心も体もアクセルを踏むのです。

ただ、子供と違って大人になると、好きなことばかりはやっていられません。嫌なことでもやらなければならないことが出てきます。ではどうしたらいいでしょうか。そこで、私がお勧めするのが、「嫌なことはほどほどに、好きなことは徹底的に」です。

そうは言っても、「がんばる」のも「がまんする」のも必要なこともあります。そして、「がんばる」と「がまんする」は日本では美徳と考えられています。日本が戦後、奇跡の復興を遂げたのも、国民が一丸となってがんばったからです。

また、「若い頃の苦労は買ってでもしろ」と言われているように、若い頃は嫌なことでも、がんばったり、がまんして、ストレス耐性を高めることが大切です。20代、30代の頃は「青年よ大志を抱け」で、高い志を持って、がんばりましょう。

ユングは40歳を「人生の午後」と言いました。40歳を過ぎたら、体力も気力も衰えてくるのです。40代、50代では、がんばるのも、がまんするのもほどほどにしましょう。そして、若い人にがんばってもらうのがいいのではないかと思います。

このように生きるのが、新型うつ病、従来型うつ病にならないコツではないでしょうか。

  • 2012年11月11日(日)17時09分