コラム

産業カウンセラー/臨床心理士 緒方俊雄のコラムです。

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目指すはお魚さん

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前回まで、シリーズもので、ストレスフリーな生き方を考えてきました。今回は軽い単発ものを書きたいと思います。

かなり以前、「イライラ、クヨクヨしていませんか」というコラムを書きました。イライラ、クヨクヨしていると、いろいろな病気になりやすいのです。でも、分かってはいても何かあると、イライラ、クヨクヨと悩んでしまうものです。
そうです、人間は悩む動物なのです。

魚が悩んでうつ病になったという話を聞いたことがありますか。
鮭の卵の筋子は卵が何百もあります。タラの卵のタラの子は何千という卵があります。何でこんなに卵が多いのかというと、育っていく間に、鮭の99%、タラの99.9%はもっと大きな魚に食べられてしまうからです。
ですから、魚が悩んでいたら大変です。いつ食べられるか分からないので、びくびくしながら泳いでいなければなりません。怖くて泳ぎたくなくなって、引きこもりたくなるかもしれません。しかし、人間のように引きこもる場所もありません。悩んでいたら鮭やタラの子どもは全員うつ病になってしまうでしょう。

しかし、魚の脳は脳幹だけでできているので、魚は悩みません。脳幹は心臓や胃、体温など身体の調整を行う脳です。コンビニエンスストアのように、年中無休で24時間動いています。脳幹が常に働いていないと魚も人間も生きていられないのです。

生命は今までの機能に新しい機能を追加しながら進化していきます。魚が陸に上がって人間になるまでに、脳幹に大脳辺縁系と大脳新皮質が加わりました。大脳辺縁系は悲しい、嬉しい、イライラなど、人間の欲求をつかさどる脳です。大脳新皮質は人間の理性をつかさどる脳です。人間は大脳新皮質が発達しているのが特徴です。「こうしなければ・・・」と考え、大脳辺縁系を押さえ込みます。
この大脳辺縁系と大脳新皮質の争いが悩みや心の病気の元になる、ストレスとぐるぐる思考を作り出しているのです。ということで、大脳辺縁系と大脳新皮質のまだ無い魚は悩んで、うつ病になることがありません。

そればかりではありません。魚はガンになることもありません。
胃がんと直腸ガンはよく聞きますが、小腸ガンを聞いたことはありますか?
そうです、小腸はガンにならないのです。
魚には小腸しかありません。進化の歴史の中で、魚は陸に上がって暮らすようになります。
すると、二つの変化が起こりました。水中では24時間プランクトンや小さな魚にありつけたのですが、陸上に上がった途端に、滅多に食べ物にありつけなくなります。えさにありつけるのは1日に1~2回です。そこで、食べたものを蓄えておくように、胃ができました。
金魚のフンというように、魚はフンを水中にたれながしています。しかし、陸上でもたれながしていると、自分の目印を残しているようなものです。自分より強い動物に尾行されて食べられてしまいます。そこで、便をたれながさないで、溜めておけるように、大腸ができました。
このように、胃と大腸は陸に上がってからできたので、大脳辺縁系と大脳新皮質の影響を受けるようになりました。ストレスがかかることが起こると、大脳辺縁系と大脳新皮質が影響を受け、そのために胃と大腸が影響されて、ガンになりやすくなるのです。
魚からある心臓もガンになったことを聞いたことがないと思います。
魚はえら呼吸ですが、陸に上がってから肺ができたので、肺もガンになります。
このように、魚には大脳辺縁系と大脳新皮質がないので、ガンにはならないのです。

ガンばかりでなく、ほとんどの病気はストレスの影響で起こります。
考える葦(あし)の人間は心の体も病んでいくのに、脳幹だけの魚はいつも心身ともに健康です。
そう、心身ともに健康でいようと思えば、目指すは魚なのです。

日々、カウンセリングをしていると、頭を使っている人ほど、心が病みやすいことが分かります。何も考えないとすぐに寝られるのに、いろいろ考えるから寝られなくなるのです。

イチローや松井のようなアスリートは余り心の病気になりません。頭よりも体を使っているからです。厳しい肉体労働をしている人も、いくら体がきつくても、余り心が病みません。
体を使っていると、余り悩まないのです。そして、疲れて安らかな眠りにつきます。

それに比べて、今の会社員の生活は1日中パソコンに向かったり、会議や打ち合わせで、頭ばかり使っています。ぐるぐるいろいろなことを考えて心が病むのも当然です。

心を健康に保とうと思ったら、仕事以外の時間はなるべく体を使うことです。
仕事が終わってから、ジョギングやウォーキングでうっすら汗をかくのは最高です。
土日も頭を使う趣味ではなく、外に出かけて、体を使いましょう。山登りやハイキングなど自然に接する趣味はさらにストレスによいでしょう。

目指すは、いつも元気なお魚さんです。

  • 2013年03月10日(日)17時22分

ストレスフリーな生き方を目指して(その6) ~Only Oneを目指す~

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前回は、どんなときにも自分を否定しないで、受け入れることが大切だという話しを書きました。今月もこの話しを続けたいと思います。

「ウサギとカメ」というイソップの有名な寓話があります。「もしもしかめよ、かめさんよ。せかいのうちにおまえほど。あゆみののろいものはない、どうしてそんなにのろいのか」という童謡にもなっています。皆さんよくご存じだと思いますが、ウサギさんとカメさんがかけっこの競争をして、ウサギさんが寝ている間にカメさんが勝ってしまうというお話しです。

よくよく考えると、ウサギさんが寝ているのに起こさないで勝つのはスポーツマン精神に反しているのではないかという気もします。

ただ、それはおいておいて、もしもウサギさんが寝なかったとすると、どう考えてもウサギさんがカメさんに勝つのではないかと思います。

その時に、カメさんがウサギさんに負けて自分はダメだと思ったり、次の日からウサギさんに負けないように、走る練習を始めたとすると、そのカメさんはきっとうつ病になると思います。

しかし、ウサギさんに負けたときにカメさんが「ウサギさんはいいなぁ、走るのが速くて。でも僕は走るのは遅いけど、ウサギさんと違って、水の中を泳ぐこともできるし、長生きもできるよ。甲羅の中に入れば子どもから叩かれても平気だよ」と思えたら、このカメさんはうつ病にならないいと思います。このカメさんは自分を受け入れているのです。

これと同じことで、人にはそれぞれ違った良さがあります。人と比較して、自分を否定するのではなく、自分の良さを受け入れたらよいのです。そして、お互いの良さを認め合うのです。

しかし、現代の競争社会を生きているとどうしても、人と比較してしまいがちです。受験戦争では偏差値が指標です。出世競争では地位が指標です。そして、その競争に敗れると自分を否定することになります。しかし、その指標は人間としてのほんの一つの側面をはかっているにすぎません。人間の良さははるかに多面的なのです。

私はSMAPの「世界に一つだけの花」が大好きです。みんながバラになる必要はない。コスモスにもチューリップにもツツジにもそれぞれの良さがあるのです。この詩のように、No.1ではなくOnly Oneを目指すようになれば、生きるのが楽になるし、楽しくなると思います。

  • 2013年02月09日(土)21時31分

ストレスフリーな生き方を目指して(その5) ~自分を否定しない~

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人との間で問題が起きると、自分を責める自責型の人と相手の人を責める他責型の人がいます。自責型の人は「あのとき私ががんばっていれば・・・」と自分のことを責めます。そして、うつ病などの心の病気になりやすいのは自責型の人です。

他責型の人は「あのときおまえが・・・していたら」と相手を責めます。責められている相手の人は心の病気になるかもしれませんが、本人は元気です。

車と車がぶつかった時に、どちらかが一方的に悪いと言うことはないように、人と人との問題もどちらかが一方的に悪いということはありません。「自分にもこういった悪いところがあったが、あなたにもこんな悪いところがあった」とお互いの間違いを受け入れるのが正しい姿だとは思いますが、問題が起きると感情的になって、なかなかできないようです。

話しは戻りますが、自責型の人は自分のことを否定しがちです。しかし、自分で自分を否定することほど辛いことはありません。自分を否定していることが心の病気の遠因になっていると思います。カウンセリングのときに私は「どんなときにも自分を否定する必要はありません。自分を受け入れてあげて下さい」とお願いします。実際に私は自分を受け入れることが一番大切だと思っています。

先日、おもしろい友人の話しを聞きました。その友達の夫婦が次のような会話をしたいうのです。

妻「ねえ、もし世界トップの大富豪2人(ビル・ゲーツとウォーレン・バレット)がその合わせた資産10兆円と引き換えに、息子さんを譲ってくれないか?と言われたらどうする」

夫「もちろん譲らないよ」

妻「そら、そうよね。と言うことは、私たちはすでに10兆円分の資産を持っているに等しいということよね」

私たちは赤ちゃんが元気に生まれることを望みます。赤ちゃんは生きているだけで価値があります。よくよく考えてみると私たちが地球に生命として存在することだけでも奇跡なのです。

しかし、「這えば立て、立てば歩めの親心」で、親は子どもが育ってくると子どもにいろいろなことを求めるようになります。

ほめないで、怒ってばっかりいるお母さんもいます。外面と内面のギャップのあるお母さんほど子どもに厳しいようです。人から見られて恥ずかしくない外面を自分が演じるように、子どもにも人前に出して恥ずかしくない子を求めるのです。優しくて、勉強ができて、運動ができて、ピアノがうまくて、気が利いて、・・・。しかし、そんな子どもはいるわけがありません。子どもは元々わがままで気ままなものです。それでお母さんは怒り続けることになります。しかし、お母さんに怒られるうちに、子どもはどんどん自分を否定するようになっていきます。

先ずはお母さんが自分の子どもを否定しないで、受け入れてあげることが必要なのです。

みなさんもよくご存じの乙武洋匡(おとたけひろただ)さんは、先天性四肢切断(生まれつき両腕両脚がない)という障害をもって生まれました。普通、自分の子どもが両腕両脚がなく生まれたら、母親は「何で私の子どもはこんな姿で生まれたのだ」と子どもを受け入れることができないで、悩むと思います。

しかし乙武さんの母親は違っていました。乙武さんが生まれた1ヶ月後、初めて乙武さんと対面したお母さんは、乙武さんを「かわいい」といって、抱きしめたのです。気を失ってしまうのではとベッドまで用意した、周囲の懸念のよそに。

「超天然」の母とおしゃれで優しい建築家の父。「いつも、大事に思っていると伝えてくれた。そういうものがくすぐったい時期もあったけど、我が家は愛に満ちていました」と乙武さんは語りっています。

乙武洋匡さんのお母さんは乙武さんの障害を受け入れることができたので、乙武さんを愛することができたのです。そして、お母さんから受け入れられて、乙武さんは自分の障害を受け入れることができたのです。この母親の愛が、乙武さんを何にでも挑戦する屈託のない青年に育てました。

もしもお母さんが乙武さんの障害を受け入れることができなかったら、乙武さんは、自分の体を恨んで、部屋に引きこもるようになったと思います。

なかなか乙武さんのお母さんのようにはできませんが、お母さんは自分の子どもを怒りたくなったとき、「赤ちゃんは生きているだけで価値がある」という原点に戻る必要があるのではないかと思います。

次回は自分を受け入れることの大切さについての話しを続けたいと思います。

  • 2013年01月14日(月)11時49分