コラム

産業カウンセラー/臨床心理士 緒方俊雄のコラムです。

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人生は山登り(その1) ~子どもが山を登るとき~

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以前、ストレスフリーな生き方を考えました。今月からはそれぞれの年代でどのように人生を送ったらいいかということについて考えていけたらと思います。

いろいろな人のカウンセリングをしている内に、人生には20代半ば、40代前半、60代前半と人生に挫折しやすい時期があると感じるようになりました。その時期は生きていく環境が変化し、その変化に合わせてうまく生き方を変えないと挫折するのです。いかに挫折しない人生を過ごすかということを1年ほど前に『「勝ち組」の男は人生で三度、挫折する』(中公新書ラクレ)にまとめました。その中で、人生を「人生の四季」という4つの時期で考えました。

今でも人生を4つの時期ととらえているのですが、この本を出してから、人生に対する考え方が少し変わりました。人生とは山登りではないかと考えるようになったのです。この考えをコラムを通して、お伝えできたらと思います。

生まれてから自分の足で歩けるようになるまでは、お母さんが自分の子どもをおんぶ(だっこ)して歩いてあげます。人生も同じで、自分の足で人生という山道を歩けるようになるまでは、おかあさんがおんぶして人生の山を登ります。子どもはお母さんの背中で、人生とはこんなものだと周りの景色を眺めているのです。

やがて子どもは一人で人生の山道を登れる年齢になります。
子どもが山を登り始める時に、お母さんは子どもに4通りの対応の仕方があると思います。

1番目は、子どもが自分で登れるようになっても、相変わらずお母さんが子どもをおんぶして登るのです。
2番目は、お母さんが子どもの横にいて、一緒に登るのです。
3番目は、お母さんが子どもの少し後ろを登るのです。
4番目は、お母さんは登らずに、子ども一人で登らせるのです。

皆さんはどれがいいと思いますか。
1番目で、お母さんがいつまでもおんぶして登るのでは、子どもは足の力がつかず、いつまでも山道を登れるようになりません。人生を一人で生きる力がつかないということです。
4番目は、子ども一人で山を登らせたら、迷って遭難してしまうかもしれません。
どうも1番目と4番目はよくなさそうです。

では、2番目と3番目はどうでしょうか。
2番目は良さそうに見えますが、お母さんと一緒に登っていたのでは子どもはお母さんに頼って、山道を覚えません。いつまでもお母さんと一緒でなければ登れないということになってしまいます。一緒に登って、ああしろ、こうしろといろいろ命令するお母さんも多いようです。
3番目は子どもは自分で考えながら山を登っていきます。お母さんは後ろにいて子どもが登っていくのを見守っています。そして、山道を間違えたり、危なかったりすると注意します。子どもは自分で登っている内に、山道や山の登り方を覚え、母親に注意されると山登りでは何が大切なのかを学んでいきます。そして、お母さんがいなくても登れるようになっていきます。

このように、私は3番が一番いいのではないかと思っています。
親は子どもが一人で生きていけるようにするのが大切です。

ただ、最近のお母さんを見ていると、過保護、過干渉で、子どものことを何でも自分でやってしまうという人が多いようです。ちょうど、1番目のいつまでも子どもをおんぶして登るにあたります。その最たる例がモンスターペアレンツです。

金八先生のような話になりますが、「親」という字は木の上に立って、子どもを見ていると書きます。親は子どもに自由にやらせて、間違いが起こらないように、見守っているということがとても大切だと思います。

  • 2013年08月18日(日)10時58分

変わろうと思わないと変わらない

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私は恵比寿で個人向けのカウンセリングをしています。主に、医者に行っても治らない慢性うつ病、パーソナリティ障害、心身症などのカウンセリングをしています。カウンセリングをしている内に考え方や行動パターンが変わって、元気になられる方が多いのですが、中にはなかなか変わられない方もいらっしゃいます。

本人が変わりたい、治りたいと思って来られる人は大体変わられるのですが、親や上司に無理矢理連れて来られた方はなかなか変わりません。

なぜでしょうか?

本人が変わろうとする気持ちが弱いのです。

カウンセリングは手術をするわけでも、薬を出すわけでもありません。カウンセリングの原動力はクライエントの変わりたいという強い意志なのです。

先日友人と食事をしていたら、友人が娘が二人いるのですが、かわいくてしょうがないというのです。その後、友人はこんな話をしてくれました。

結婚してから直ぐに、家内が調子が悪くなり、病院で診てもらった。子宮筋腫で、もうかなり進行しているので、子宮を全摘しなければならないと言われた。自分と家内はどうしても子どもが欲しかったので、なんとか子宮を全部取らなくて治らないかと思い、2軒目の病院に行った。そこでも、子宮筋腫で手遅れなので、子宮を取ってしまわなければならないと言われた。しかし、家内と何とかならないかと思い、3軒目の病院に行った。しかし、そこでも言われた言葉は同じだった。「もう手遅れなので、全摘しかありません。」
しかし、それでも納得できなくて、家内と4軒目の病院に行った。するとその病院の医師の言葉は少し違った。「子宮筋腫が大分進行してるので、子宮を全摘しなけらばならないかもしれないが、全摘しなければならないかどうかは、実際に手術して、見てみなければ分りません」
それで、その可能性にかけて、その病院で手術をすることにした。私も手術に立ち会った。お腹を開くと子宮筋腫は拳くらいの大きさになっていた。しかし、手術をした医師がうまくその子宮筋腫を子宮からはがすことができ、子宮は取らなくてすんだ。本当にありがたいことだと思った。
その後もなかなか子どもに恵まれず、不妊治療に通ったりしてやっとできた子どもなので、かわいくて仕方が無い。

友人の話を聴いて、感動しました。二十数年前で、まだセカンドオピニオンという言葉も余り使われて異なかった頃の話です。その時に、どうしても子どもが欲しくて4軒も病院を廻ったのです。今二人のお嬢さんがこの世に生を受けていらっしゃるのは、手術した医師の腕がよかったこともあると思いますが、友人と奥さんの子どもが欲しいという強い意志があったからではないかと思います。

先日もこういうことがありました。10年以上うつ病で苦しんでいた人がカウンセリングを受けに来ました。その10年の間、なんとかもう一度元気になりたいいと思い、ありとあらゆることをしたそうです。医者もいろいろ変えました。2度半年間入院しました。漢方も通いました。民間療法にも通いました。しかしよくなりません。

すると、AMAZONのサイトで私の書いた「慢性うつ病は必ず治る」を見つけました。どうやったらカウンセリングが受けられるのか分らないため、幻冬舎に手紙を書きました。それで、私が返事を書き、藁をもすがる気持ちで私のカウンセリングルームに来られたのです。

最初はカウンセリングに来るのも辛いほどでしたが、だんだん良くなりました。そして、半年もすると毎朝6時に起きて、10キロほど散歩するようになりました。周りの人とも積極的に付きあい始め、行動も考え方もポジティブになってきました。

自分でもうつ病が治ったと思われ、私に感謝の言葉を述べられました。その時私は、「うつ病を治したのはあなたの意志ですよ。私はそのお手伝いしただけですよ」と話しました。

実際にこの方のどうしてもうつ病を治したいという意志があったから私のカウンセリングルームにもたどり着かれたのだと思います。そして、もしも私のカウンセリングを受けて治らなかったとしても、治してくれる人と出会うまで、探し続けられたことでしょう。

この方は10年以上もうつ病で苦しんでいたので、その間に病院などで知り合ったうつ病仲間が沢山いらっしゃるそうです。その中のうつ病が慢性化して苦しんでいる友達3人に私のカウンセリングを紹介したそうです。しかし、その3人の友達がなかなか私のカウンセリングを受けようとしない。そこで、私の慢性うつの本を買って、3人にプレゼントしたそうです。

しばらくして、「緒方さん、おかしいんです。3人はなかなか本を読もうとしないんです」と不満を述べました。

そこで、私は「その3人は、うつ病が辛いといっても、本当に治りたいとは思っていないんですよ。もしもここにカウンセリングを受けに来られても、治りたい、変わりたいと強く思っていなければ代わりませんよ」と話しました。

うつ病は辛い病気ですが、長年うつ病でいる内に、周りの人が優しくしてくれる、年金がもらえるなど、だんだん居心地がよくなってしまうのです。そして、うつ病から離れるのが怖くなるのです。

これはカウンセリングに限りません。人間というものは、変わらなければならないと分かってはいても、なかなか変わろうとしないものです。変わらない方が楽だし、変わるのが怖いのです。必要なのは、変わろうという強い意志です。

アメリカの心理学者ウィリアム・ジェームスの言葉で、「意識が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる」という言葉がありますが、至言だと思います。

『3週間続ければ一生が変わる』という本があります。この本の中でロビン・シャーマは、「3週間続ければそれが習慣になる」と語っています。

今の自分に不全感をもたれているのであれば、変わりたいという強い意志も持ち、三日坊主ではなく、3週間続けてみてはいかがでしょうか。

  • 2013年05月19日(日)10時26分

意識して生活パターンを変えてみる

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以前、このような話を聞いたことがあります。
アメリカでうつ病を研究していた学者が、自分はうつ病を研究しているけれども、うつ病になったことがないと思ったのです。そこで、うつ病の人の気持ちを知るために、うつ病の人の生活のまねをしてみました。
朝はいつまでも起きません。1日中、パジャマ姿で、ひげも剃りません。ベッドの上でごろごろして、ため息ばかりついていました。
大学にも現れません。大事な学会にもその先生が出て来ないのです。お弟子さんが心配になって、その先生の家に行ってみました。すると、びっくりしたことに、その先生はうつ病になっていたのです。

うつ病になると、何もやれなくなるので、先生がまねしたような生活パターンになります。しかし、うつ病のような生活パターンをしていると、うつ病になってしまったのです。これは、うつ病とその生活パターンが一体であることを語っています。

「慢性うつ病は必ず治る」(幻冬舎新書)を出版してから、10年以上うつ病の人のカウンセリングをすることが増えました。
そういった慢性うつ病の人の多くは、すでに仕事を辞めて、自分の部屋に引きこもっています。まさにうつ病の生活パターンの生活をしているのです。確かに、うつ病になった時には、上司が厳しかった、寝る間も無いほど仕事が忙しかった、離婚した、近親者が亡くなったなどのうつ病になった要因があったはずです。
しかし、10年以上うつ病をしている間に、もはやうつ病になった要因は無くなっています。なのに、うつ病は続いています。そして、うつ病の生活パターンを続けています。うつ病と生活パターンが一体化しているのです。

うつ病を卒業するためには、先ずはうつ病の生活パターンを変えなければなりません。一人で部屋にこもっているのではなく、外に出かけて、体を動かし、人と話をするのです。すると生活パターンが変わるとともに、少しずつうつ病から抜け出てきます。
心の病気から元気になられた人は「病気が治ったから、病気が気にならなくなったのか、病気が気にならなくなったから、病気が治ったのか」とよく言われます。病気は「気の病」と書きますが、病気の症状と病気が気になることが一体になっているのです。病気が気になっていると、いつまでも病気の症状が続きます。慢性の心の病気では、生活パターンを変えるだけではなく、意識を病気以外に向け、もう心の病気は治ったと思うことが大事なのです。

先日、ある程度うつ病が良くなってきた人に、「何が一番やりたいですか?」と訊ねてみました。すると、「うつ病が治ったら、もう一度ハワイに行ってみたい」と言われます。そこで私は「うつ病が治ったらハワイに行くのではなくて、ハワイに行こうとガイドを調べて、旅行のプランを立て、ハワイのビーチに立った時に、あなたのうつ病は治っているんですよ」と答えました。すると「う~ん、確かにその通りかもしれません」と言われました。

うつ病になった原因がなくなっているのに、いつまでもうつ病が続いている人がうつ病から抜け出すためには、先ず意識をうつ病以外に向けることとうつ病の生活パターンを変える必要があるという話を書きました。これは、うつ病以外の人にも何か生きるためのヒントになるのではないかと思います。

  • 2013年04月07日(日)07時35分